新型コロナウイルスによって、メンタルヘルスにかなり深刻な影響が出てきています。
新型コロナウイルスに関係した、うつ状態や心身の不調は、様々なタイプがありますが、特に、いわゆる「コロナうつ」という、うつ状態、うつ病が増えてきているように思えます。
このブログでは、実際、最近、当院に受診された患者さんの傾向をもとに、解説していますので、もし、これを読んでいるあなたが、当てはまるところがあって、困ってらっしゃるなら、早めに受診されることをおすすめします。あまり自分で気づかなくても、うつ状態はれっきとした、「病」です。こころの病だから気のせいと片付けないでください。気合では、事態は改善しません。ぜひ、別ページ「受診する決断ができない方へ」も参考にしてください。
1)経済的理由で生活していけない
経済的理由が原因で、うつ状態になることは、当然のことです。自殺の原因のトップ2は、経済的理由と健康問題ですから。
実際、患者さんによると、「歩合制の仕事なので、お客さんが減って、給料が半減した」「シフトがゼロになった」「会社が倒産した」など、切実な相談を受けています。救済としては、給付金の申請、生活保護の申請、医療費の公費負担制度の利用などがあります。
先日、ある方から、障害年金の申請を相談されましたが、実務的には、病状が障害年金に該当するか、だけではなく、初診から1年6ヶ月後の申請というハードルがあること、申請してから、支給まで、最近では、4,5ヶ月かかっているので、申請するかどうかは、それまで生活費が持つか?ということもポイントとなります。
生活保護の申請は、現在通院しているかどうかは関係ありません。「生活保護を申請したいから、精神科を受診したほうがいいと思って、来ました」と言って初診される方がたまにいますが、受診はあとで結構です。まず、生活保護を申請してください。あとで必要があれば、精神科を受診してください。患者さんで、生活ができなくて、数ヶ月だけ生活保護を利用して、生活を整えたのち仕事に就いて、保護を打ち切ったという方もいますので、生活に困ったら、まずは区役所で相談してください。
シフトが減った、給料が減った等で、うつ状態が悪化して、働くことができそうにない方であれば、休職して、傷病手当金をもらって生活するという選択肢もあります。傷病手当金の給付には条件がありますが、クリアしていれば、最長1年6ヶ月もらえます。不幸にも退職したり倒産しても、引き続きもらえます。傷病手当金がもらえるかどうかは、お勤めの会社にご相談ください。もちろん、傷病手当金の診断書は、当院でしっかり作成します。
もし、自己破産したい、会社を精算したいなどで、弁護士さんが必要でしたら、知り合いの弁護士さんを紹介します。まずは、相談です。
2)感染がとにかく怖い
実際、患者さんによると、「職場のコロナ対策が不十分で、怖くて、仕事に行けない」「職場のビルの違うフロアで、コロナの人が出て、怖くて、仕事に行けない」など、切実な相談を受けています。「感染が怖い」は甘えではありません。誰でも怖いですし、どの医療従事者も命を張って仕事をしているように、ほんとうに怖い感染症です。私も、当院でたくさんの方に会うので、自分が感染したら、命を落とす可能性があり、同じような恐怖心をもっています。
その恐怖心、不安感によって、うつ状態が悪化してしまった場合、当院で、休職の診断書を作成できます。疾病による休職の場合、傷病手当金の対象です。
3)なぜか体調不良
実際、患者さんによると、「熱が出て、体調不良になった。検査しても、新型コロナではなかった。それから、ずっと体調不良」との切実な相談を受けています。「それでも、自分が、もし、コロナだったら、会社に迷惑をかける、お客さん、取引先に迷惑をかける。出社しない方がいいのではないか」という責任感から、有給を使って出社を自粛しているうちに、ノイローゼ気味になって、体調に自信が持てなくなって、日に日に、うつ状態となって、「コロナうつ」と診断された方がいました。この方は、れっきとした、「うつ病」と診断されたわけですが、ご自分でも、信じられない!と。
うつ病は、状況によっては、速いスピードで、あれよあれよという間に、悪化することも、まれではありません。まさか自分が!という健康体の方が、うつ病になることだって、不思議なことではありません。思考力が低下する、考えごとが止まらない、風呂や食事といった日常生活で自然にやっていたことができなくなる、寝られない、自分を責める、等、、うつ病に特徴的な症状がポイントです。
必要に応じて、休職をおすすめしています。ぜひとも、ご相談ください。
4)オンライン授業のやる気がでない
大学生の方が、「大学をやめたい」と相談に来られました。よくよく聞いてみると、オンライン授業をしているが、講義がチンプンカンプンと。自分は頭が悪い、理解できないと、自分を責めだして、オンライン授業の出席のボタンだけは押すけど、横になって寝ていると。。。
何時間も、画面に注視し続けることが要求され、聞き漏らさないように、注意し続けることは、かなりしんどいものがあります。特に語学だとそうかもしれません。
オンライン授業は、学生どうしの横のコミュニケーションが取りづらい(とれない)ですし、特に、もともと人付き合いが苦手な方は、オンラインでつながるなんて、ハードルが高すぎるので、孤立してしまうのです。自分の学びが、今、どんな位置にあるのか、手を抜いていいのやら、がむしゃらにやるべきなのか、、、すら、オンラインだと、見えづらいのですね。孤独感も感じるはずです。私は、大学生のとき、授業はサボってばっかり、出ても聞いてなかったし、横に座っている人に見せてもらったりして、人とつながって手抜きもしていました。多くの人とのつながりは、大学生活で大切なことですし、社会に出ても役に立つものです。オンラインだとそれができないのです。
オンライン授業で疲弊している学生さん!学校をやめてはいけません!まずは、学生相談室を利用したり、精神科で相談してください。相談するだけで、楽になるかもしれないし、まずは、(オンラインではなく)リアルに人に相談することです。
リモートワークで体調不良の方は、リモートワークによるメンタルヘルスリスクもご覧ください。
5)過重労働でヘトヘト
コロナ禍で、スーパーや製造業など一部の業種の方は、とても仕事が忙しくなっています。毎日、残業で、疲れて、ヘトヘトと。。。そういう患者さんもからも、つらい・・・という相談を受けています。気が張っていて、イライラする、寝られないと。これも、「コロナうつ」と言えるのでしょうね。本来なら、「休むこと」がポイントですが、人が足りなくて、休めないことも。
先が見えないことで、勢い余って、仕事をやめてはいけません!受診してくだされば、治療もしますし、休職の診断書も作成しますし、ますば、相談を!
6)もう、死にたい
死にたいと思うのは、「うつ病」という病気のせいで、ものの考え方が、いつもの自分とは違ってしまっているから、そう思うのです。
健康なときのご自分なら、そんなふうに考えないはず。どうしても死にたい気持ちが強くて、どうにもならないとき、周りの人に頼んで、近くの精神科病院を受診してください。命が一番大事なのです。自分で命を落とす正当な理由などありません。もう、自分で、自分のことを判断する能力はないと思って、信頼できる人に身を委ねてください。
受診するにも、経済的な心配があっても、なんとかなります。一番大事なのは命です。
もし、私が同じ立場だったら、信頼できる人に身を委ねて、精神科病院に入院して、隔離室で隔離されてでも、死にたい気持ちが弱まるまで、強制的な治療を受けると思います。それくらい、「うつ病」という、いわば、「脳のホルモンのいたずら」は、しつこくて、やっかいなのです。「うつ病」は「脳の病気」です。気のせいでも、気合でもないし、性格でもないし、もう、どうにもならないことでもないし、死を選ぶ必要もないのです。