院長です。
私は、テレビよりラジオ派で、今日も、何も特別なことを考えずに、家で、NHK-FMを流していました。たまたま聴いた「うつ病九段」というラジオドラマに感銘をうけました!
実は、朝の情報番組で、うつ病九段の話は、見たことがあったのですが、、、詳しくは知りませんでした。本を読んだことはないので、今日のラジオドラマで初めて内容を知りました。
うつ病を理解する上で大切なことが描かれている内容でした。
内容については、著作権もあるでしょうから、NHKのサイトでご覧ください。
うつ病は「こころの風邪」ではなくて、「脳の病気」
うつ病は、この20年で倍に増えていて、40代に多い。
世間は「どうせ、製薬会社が薬を売りたがっているから、医者がたくさん診断して、薬を処方しているんだろう」とか、「薬を処方すればするほど、製薬会社から、医者はバックマージンをもらっているんだろう」などという都市伝説が、まことしやかに信じられていて、「だから、うつ病は増えている」ということまで言う人もいます。
これは大間違い。
うつ病が増えている原因の一つとして、人手不足や仕事の複雑さが増したことによる過重労働、特に40代は団塊ジュニア世代なので、そもそも就職難だったし、出世争いで疲弊したり、離職したり、で、人間関係でも疲れ果て、リスクは高いのではないかと思います。
うつ病・・・持続的な緊張状態で、思考力が低下します。
脳の機能が低下しているわけです。いつもの自分と違って、パフォーマンスが発揮できないことにたいする苛立ち、自分を責め、周りが羨ましく思って、余計、腹が立ちます。
うつ病九段では、主人公が九段のプロ棋士ですから、将棋の先読みができなくなった状況から回復していく過程が丁寧に描かれていて、治療者としても参考になりました。
脳の病気ですから、しっかり治療すること、特に、脳をいたわって、緊張から開放し、リラックスすることが大切です。うつ病九段では、入院して、何もしない生活を送ることに徹していました。私の診察では、しっかり寝ること、体を適度に動かすこと等を、患者さんに指導しています。
治療の全体像を考える大切さ
薬の治療が全てではない。というスタンスは初期から大事です。
休息をとること、リラックスすること、が、ポイントです。そのポイントに、そっと力添えするのが薬なのであって、薬を飲んでさえいれば良くなるというスタンスは間違っています。
休めるのなら、休む。睡眠をしっかりとる。頑張りすぎない。自分でもできるリラクゼーションを意識的にすることです。当院通院中の患者さんには、資料を配布して、しつこいくらいに指導しています。
うつ病九段のストーリーの中では、薬に関するシーンは、眠剤が投与されるシーンしかありませんでした。私は、なるほど、寝れて、安全に休めれば、抗うつ薬はいらないな・・・と思いました。
治療の全体像(ストーリー)を考えるとき、薬がじゃまをしてはならないと思っています。薬はあくまで治療ツールの一部。うつ病九段の主人公は1年でうつ病を克服しました。期間や目標は人それぞれですが、初期から目標を考えて、治療するべきですよね。
まったくの初診から当院で治療を受けたうつ病の患者さんが、しっかり回復して、治療が終結して、卒業された方は何人もいます。
自分でやることも治療のひとつ
治療は医者任せではありません。
生活習慣病のように、生活習慣を改めることが必要であるように、うつ病でも、患者さんなりに、できる範囲で、やったほうがいいことがあります。ラジオドラマでは、散歩しなさいということが、随所にありました。青い空を眺めたり、景色が色づいていく描写もありました。
うつ病は、風邪のように、寝ていれば自然に治るものではありません。脳の病気、脳の機能が低下している状態を健康な状態に戻すことが必要です。治療の一環として、運動や食事など、患者さんにも、できる範囲で、治療に参加していただきたいものです。こう考えると、ますます、治療って、薬だけではないってことです。うつ病九段の主人公は、思考力が低下して打てなくなった将棋をまた打てるようになりたいという一心で、治療を自分自身のものとして受け止めたんだと思います。
このように、辛いことでも自分でやることも治療のひとつと思って、医師と一緒に相談しながら、治療をすすめるのが理想ですねよ。